「平成19年度ヒューマンコミュニケーション賞」決定

ヒューマンコミュニケーション賞規程に基づき,慎重な選考を重ねた結果,以下の計6件の発表に平成19年度HC賞を授与することに決定いたしました.

http://www.ieice.org/~hcg/jpn/modules/aboutus/prize.php

■ HCS研究会
   
  1. 澤田秀之・中村光宏・林恭守・木谷光来(香川大) (HCS2007-24)
  「発話ロボットを用いた聴覚障碍者の発話訓練」
  【選考理由等】
   聴覚フィードバック学習を用いた発話システムを聴覚障碍者の
   発話訓練に用いることは社会的・実際的な有効性が期待できる.
   本研究では,聴覚障害者を対象としたシステム評価により,その
   有効性と課題が評価されている.これらのことから本研究は,社会
   からの要請に応える可能性があるヒューマンコミュニケーション
   研究となることが期待されると考えられ,HC賞に相応しいと判断された.
   
■ HIP研究会
   
  1. 河地庸介・行場次朗(東北大) (HIP2007-129)
  「知覚的に消失した物体の削除が再起させる視覚的アウェアネス」
  【選考理由等】
   本報告では,運動誘発盲(MIB)によって知覚的に消失した物体を
   物理的に削除することで視覚的アウェアネスを再起させる現象に
   ついて報告し,その時空間特性について検討している.さらに,
   この再起現象が物理的削除を検出したことによって媒介されて
   いないことも示している.これらの知見は関連研究者にとって
   非常に興味深く,また,論文自体もよくまとまっていることから,
   HC賞に相応しいと判断した.
   
  2. 坂本寛之(北大)・石川悟(北星学園大)・大森隆司(玉川大) (HIP2006-112)
  「幼児の注意配分のモデルベース推定の試み」
  【選考理由等】
   動的な対象(移動する人間)と静的な対象(障害物)に注意を
   配分し,環境から適切な情報を取得して,自分の行動を決める
   際のモデルの妥当性を,幼児の発達段階に応じて調べたデータを
   もとに検証したもので,発達心理学における研究の新たな切り口
   を提供したものとして高く評価できる.今後が期待できる研究である.
   
■ MVE研究会
   
  1. 高橋康介(JST)・齋木潤(京都大)・渡邊克巳(東京大) (MVE2007-5)
  「仮想物体の変形に対する視触覚間同時性知覚の順応」
  【選考理由等】
   知覚心理学的な見地から異種感覚間の同時性知覚の順応に焦点を当て,
   視触覚間では視聴覚間と同様に主観的な同時点が10-20ミリ秒移動する
   こと,また聴覚とは異なり受容器間では順応の転移が起きないことなど
   を示した点が評価される.また論文のまとめ方,体裁ならびに発表も
   優れていたことも高く評価できる.
   
■ WIT研究会
   
  1. 清田公保(熊本電波高専)・江崎修央(鳥羽商船高専)・伊藤和之・伊藤和幸(国立リハ) (WIT2006-77)
  「中途視覚障害者の学習支援を目的としたペン入力学習ノート"PenTalker"の開発」
  【選考理由等】
   中途の視覚障害者の就学支援を目的としたペン入力方式による学習電子
   ノートシステムの研究開発報告である.明確な障害当事者のニーズと
   文字の崩れに対応するアルゴリズムというシーズのバランスがとれた
   研究である.点字などを新たに学習することなく,ペンによる文字入力
   ができるなど有用かつ実践的な研究である.どのような文字が入力され
   やすいかを分析し,それを考慮した提案手法による高い認識精度が得ら
   れているなど今後の発展も期待できるため.
   
  2. 渡邉文浩・森本猛・林恭平・葛目幸一(弓削商船) (WIT2006-126)
  「歯の接触音を用いた個人特性適応型ユーザインターフェースの開発とECSへの応用」
  【選考理由等】
   重度な四肢麻痺者のための「歯の接触音を用いたユーザインターフェース」
   の研究開発報告である.現時点では実際には環境制御装置(ECS)への応用
   には及んでいないが,歯の接触音をインタフェースに用いるという独創性,
   新規性を高く評価する.加えて,小型で負担が小さくコストも抑えられており,
   今後の発展が期待できるため.