運営委員長のご挨拶(2010年度)

ヒューマンコミュニケーションにより情報の伝達を考える

2010年度ヒューマンコミュニケーショングループ運営委員長 美濃 導彦(京都大学)

運営委員長

情報社会はコミュニケーションに対する技術革新がもたらしものです。情報の本質を考えるに当たってはデータ通信やコミュニケーションを抜きには考えられないことは、シャノンの情報理論が通信理論として発表されたことからも理解できるでしょう。情報社会の一番核心の部分を研究対象としているのが、ヒューマンコミュニケーショングループ (HCG)です。HCGの研究領域には、人間同士および人間とシステムの多彩なコミュニケーション、人間とシステムの社会的な関係、情報を伝える情報メディアなどに関する研究が含まれており、情報技術をツールとして使う多くの研究領域から多様な研究者が集まって情報とは何か、それをどう伝えるのかなどを中心に議論をしています。電子情報通信学会と言うと技術系で難しいことを議論している学会だと思われがちですが、そんな中で理科系と文化系の融合的な領域で、いわゆる情報分野を横断したような活動を精力的に展開しています。

コミュニケーションは2つ以上の個体(人間や情報システム)が相互に情報をやり取りする過程で、その結果双方が変化するものと考えられています。これはかなり高度なレベルの記述で、これを実現するためには、まず、人間や機械の情報入力処理のプロセスを考える、受けとった情報を加工し相手に伝えるべき情報に変換するプロセスを考える、処理結果を表示する出力プロセスを考えるという3つのプロセスを研究しなければなりません。これらが双方でかみ合ってインタラクションが成立し、その結果受け取った情報を解釈して自分を変えるという処理が必要になります。

HCGは、このような過程を様々な視点から議論する研究会の集合体です。研究会は生き物のようにダイナミックに変わっていくことを期待していますが、現在ある研究会を以下に簡単に説明します。人間同士のコミュニケーションを基礎的に考えている「ヒューマンコミュニケーション基礎研究会(HCS)」、人間側の情報処理にフォーカスを置いている「ヒューマン情報処理研究会(HIP)」、新しいメディアを用いたインタラクションやインターフェースを議論する「マルチメディア・仮想環境基礎研究会(MVE)」、障害を持った人たちとのコミュニケーションを考える 「福祉情報工学研究会(WIT)」、情報社会で中心的な役割を果たしているWebというメディアを介してのコミュニケーションに焦点を絞った「Webインテリジェンスとインタラクション研究会(WI2)」、発達障害者の発見と支援方法の確立を目指す「発達障害研究会(ADD)」、人が持ち歩くセンサ情報を活用して人間や環境に関する情報を共有し、利用することを目指す「ヒューマンプローブ研究会(HPB)」、医療関係者とコミュニケーションの議論を深める 「先端医科学技術研究会 (AMST)」、人間同士のコミュニケーションをインタラクションの側面から議論している「ヴァーバル・ノンヴァーバルコミュニケーション研究会(VNV)」、料理というメディアを介したコミュニケーションや人間支援を議論する「料理メディア研究会 (CM)」、情報社会の倫理を考える「人間とICT研究会(EHI)」があります。研究領域に関してはすべて私見ですので、現在の研究会の委員長の先生方は違ったことを考えておられる可能性があることを申し添えておきます。

HCGが対象としている問題は、これらの研究会だけでカバーできているとは思いません。まだまだ、違った視点からの、違った研究領域の先生方とのコラボレーションが必要ではないでしょうか?何か新たなことを始めたいと思っておられる研究者の方々には、考えておられる研究領域に近い研究会に一度参加をしてみてください。いくつかの研究会に参加されて、議論がかみ合わない場合や方向性の違いを感じられたら研究会の新設を提案されてはいかがでしょう?HCGでは新たな視点からの研究会やこれまでにない研究領域とのコラボレーションを目指す研究会の新設に関する提案は大歓迎です。気軽に研究会に参加できるだけでなく、気軽に新たな研究会が作れる、不要になれば解散できる、という柔軟な活動ができること、これを大切にしているのがソサイアティとは違うグループ(HCG)の特質であります。積極的にご利用くだされば幸いです。

今後ともHCG活動へのご参加・ご支援をお願いいたします。