講評:
ターゲットを絞った具体的な研究で,実用性,有効性ともに明確な成果を示されており,今後の課題も明確になっている.音で照準の適合具合を知らせるというアイディアはシンプルであるが,誤差修正の研究プロセスは精緻であり,実際に的中率を向上させることに成功した点は優れている.シンプルな着想から出発し,大きな成果を得るという「研究ストーリー」も大いに評価できる.音の変化だけで成績が顕著に向上していた点がすばらしく,また参加者の方が笑顔で楽しそうにスポーツを嗜んでいる様子を見て,科学が人の幸せに貢献していることがありありと伺えた.
講評:
食品材料から構成される可食ロボットを実際に食べることが人の心理や認知に与える影響を研究する研究の第一段階として,動きを調整可能なゼラチンベースの可食ロボットのデザインと動きの印象評価を行っている.新規性が高く,独創的なアイデアとアプローチが大変面白い研究である.質疑応答でも盛り上がったように,実験デザインの妥当性,結果の解釈など,大いに議論の余地があるが,それも含めて将来性がある研究である.
講評:
本研究は画像の波数特性による瞳孔反応を利用したBMIの開発に資する基礎的知見を得た研究である.ハイパスフィルタ・ローパスフィルタ処理をされた二つのターゲット画像を同時に提示したときに観察者の瞳孔径が注意を向けさせたオブジェクトの周波数特性に依存して変化することを示しており,サンプルサイズは小さいものの,しっかりした基礎的な実験が行われており,実用化を期待させる結果が得られている.ALS患者など,四肢を動かすことが困難な方々の比較的な簡便なコミュニケーションツールとして実用化されればかなりのインパクトがある内容を扱っている.今後のさらなる発展を期待してぜひ賞を授与したい.
講評:
本研究では,4名の作業者がそれぞれの視点から鮮明な空中像を観察可能な新しい空中像提示システムの構成法を提案しています.複数の作業者に対してそれぞれの視点から観察できる空中像を提示するシステムは,これまでにない柔軟な作業環境を実現するため注目を集めています.しかしながら,空中像提示システムで頻用される再帰透過光学素子を用いた従来手法では,迷光と呼ばれる不要な光が目立ち映像品質が低下する問題がありました.本研究では,偏光板と視界制御フィルムを用いて迷光を大幅に抑制する巧妙な仕組みを提案し,さらに関与するパラメータの制約を考慮して実際に効果的なシステムを試作しています.従来手法に比べて優れたユーザ体験を実現しており,今後の発展が大いに 期待できるため,HC賞候補に推薦いたします.
講評:
視覚障害者への放送サービスの充実を目的とした研究であり,新規性および有用性を有している点や今後の展望も期待される取り組みである.視覚情報が主体の放送番組を視覚障害者に楽しんでもらうための課題や要素技術に関する,著者らの先行研究での知見が活用され,音声ガイドの作成方法や音声ガイドアプリの実装に加え,スポーツ大会における複数種目を対象とした実証実験が行われおり,研究プロセス全体の質も高く評価された.以上のことから,福祉情報工学分野の発展に資する研究発表としてHC賞候補に推薦する.